オフの日の左近はたいてい寝ている。
そう、今日も例外なく寝ている。
長い髪が枕の上に文様を作り、髪からうなじ、肩にかけてもいく筋か流れている。鍛えられた背中の筋肉が程よく盛り上がって呼吸をするたびに動く。
左近は胸元に抱いていた。
・・・枕を。
こっそりその枕をどかし、その胸元に滑り込んでみようか。
絶対驚くぞ。というか、張り飛ばされるな、俺なら。
蘭丸は同居人のように自由に左近の部屋に出入りしている。
用があれば左近の都合や時間も構わずインターホンを連打するので、左近から合鍵を渡されていた。
「うるせーから勝手に入ってろ」
左近には珍しくドスの効いた低い声。蘭丸はまったくひるまず、にっこりと受け取った。
「合鍵ね。男からもらうのも悪くないよな」
それから蘭丸は静かに出入りをするようになっている。
「ちょっと、本当にいいの?」
玄関先に立ったまま、ひそひそ声で綾女が蘭丸に言う。
蘭丸が綾女を呼び出し、無理やり左近の部屋まで連れてきた。
「いいよ、別に」
「あなたの都合を聞いているんじゃないのよ」
蘭丸は普通の声で綾女に答える。
「もっと小さい声にしなさいよ。ちょっと、なにするの」
蘭丸は綾女の手を引っ張り、左近の寝室のドアを少し開けた。
「枕を抱えているだろう?あれ、綾女と知り合ってからなんだよ。綾女の代わりに枕を抱えているんだよ、きっと」
「何馬鹿なこと言っているのよ」
綾女はつい声を出してしまった。あわてて自分の口を塞ぐ。
「うるせーな・・・また蘭丸かよ」
左近が覚醒し、体を起こした。上半身裸。それを見て綾女は声も出ず、体が固まった。
「あっ、綾女っ?」
左近も固まる。蘭丸は綾女をソファに座らせると、
「じゃ、あとはごゆっくり」
と出て行った。
- 現代版
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