左近は手早く着替え、そっとリビングを見た。綾女が気まずそうにもじもじとしている。
「おはよう」
左近の声に綾女はパッとこちらを見た。
「お、おはよう、ございます」
かなり緊張している。一人暮らしの男性の部屋に入ったのは、初めてだった。
「ごめんなさい、朝からいきなり。私、帰りますね」
言いながら玄関に向かう綾女。
「綾女」
綾女の手をつかむ。
「いいよ、いてほしい」
「え、でも」
左近は微笑んだ。
「一緒に朝ごはんを食べよう。昨日のおいしいパスタのお礼」
左近の微笑に綾女もほっとした。嬉しそうにうなづく。
コーヒーのいい香りが漂う。
「困った時とかどうしようと思ったとき、左近はいつも優しく笑ってくれるよね。あれってほっとする」
トーストにバターを塗りながら綾女が言った。
「そう?別に考えたことないけれど」
「でも安心する」
綾女はニコニコしていた。すっかり安心したようで普通の表情に戻っていた。
洗い物をする左近の横で綾女が布巾を持ち、食器を拭いている。
「拭かなくてもいいよ」
「だって急にお邪魔して、ご飯までご馳走になって、はいそうですかというわけにはいかないもの」
「綾女はまめなんだね」
拭き上げた食器をしまいながら左近が言う。そして綾女を見つめる。
「左近・・?」
左近は我に返り、頬をうすく染めてソファを綾女に勧め、隣に座った。
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