ど、どうしよう・・・。
綾女は真っ赤になったまま、左近と目を合わせられずに固まっていた。
左近はそんな綾女を見つめていた。
「卒業式だったんだね」
左近の言葉に綾女は少し緊張が緩んだ。
「あ、はい・・」
「とてもいい声だったよ、答辞」
綾女は顔の前で手を振った。
「いえ、そんな、とんでもないです」
「蘭丸と同じ学校だったんだね。今日のことは蘭丸から頼まれたことなんだよ」
「あ、そうなんですか」
左近は頬杖をついた。
「式で答辞を読む子が、俺の大ファンだと聞いて見てみたくなった」
「え、でも他にもファンの子はたくさんいるでしょう?」
左近はそれまでの余裕たっぷりの態度を崩さなかったが、一瞬少しあわてた様な表情をした。
「なぜかな。会ってみたくなったのは君が初めてなんだよ」
綾女は驚いて左近を見つめてしまった。視線が絡まりあう。
「また会ってもらえるかな・・」
左近が微笑みかけ、綾女はかすかにうなずいた。
気づくと綾女はひとりで座っていた。
とぼとぼと帰宅する。
自分の部屋に入ったとたん、左近のポスターがお出迎えする。
「左近」
左近人形をぎゅっと抱きしめる。
「また会いたいって。嘘みたい」
人形を抱きしめたままベッドの上をコロコロ転がる。
「や〜ん、嬉しい〜」
そしてがばっと起き上がり、鏡の前に立つ。
「私、変じゃなかったかな」
鏡に映るのは恋する少女の姿だった。
その夜は遅くまで興奮して眠れない綾女がいた。
- 現代版
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