ふと目をあげると夕焼けがきれいだった。
綾女はベランダのサッシを開け、サンダルを履いて外に出た。
「おいで、夕焼けがきれいよ」
綾女に似た女の子が声に誘われ、歩いてくる。
「ほら、見てごらん」
綾女は女の子を抱き上げ、一緒に夕焼けを見た。
「きれい・・」
「でしょ?明日もいい天気になるといいねぇ」
「ママ、パパは?いつかえってくるの?」
「今日よ。お土産楽しみね」
「うん」
風が冷たくなってきた。
「梓、おうち入ろうね」
「あのね、あずさね、ほしいものがあるの」
「なぁに?」
「おとうとかいもうと。みんないるのにうちにはいない」
綾女はサッシにつまづきそうになった。
「そんなこと話しているの?」
梓はうなづいた。
「ききょうおばちゃんと、かよおばちゃんが、おとうさんとおかあさんにおねがいしなさいって」
まったく、桔梗も佳代も3歳児に何て話をするのかしら・・。
綾女は23歳で左近と結婚した。同時に左近と綾女は自然に愛し合い、間もなく梓を身ごもったのだった。
左近は年に数回、ひと月ほどかけてモデルの仕事やサックスの演奏会に出かけている。最近は減らすようにしているが、それでも梓に寂しい思いをさせていることには変わりがなかった。
綾女も寂しかった。
- 現代版
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