「あの子きれいだな」
「いいな」
「俺のものにしたい」
邪念が綾女を襲う。
眠っている時の綾女は無防備で、しばしば悪夢にうなされた。寝ているはずなのに寝ておらず、綾女は食欲もなくなり痩せてきてしまった。
「大丈夫か、綾女」
隣で寝ていた左近に起こされ、ぼんやりと左近を見返す。すでにその瞳は左近を見ていない。綾女の心は蝕まれ始めていた。
「最近、綾女が変なんだ」
左近が仕事の合間に、龍馬に漏らした。
「夜、眠っているようだが眠れていない。ぼんやりとして笑わなくなった」
「お前が寝かせないだけじゃないか?」
左近はむっとした。
「そんなことはない。節度をわきまえているつもりだ」
「そんなにムキになるな。それにしても気になるな」
「夢魔だ」
蘭丸が乱入してきた。
「夢魔?」
「ああ、強い邪念がある。言っておくが、俺の仕業でもない。もっと俗物的な、本能的な邪念だ」
蘭丸と龍馬は左近の部屋に入った。綾女はすでに帰宅しており、靴が玄関にあった。
「綾女」
左近の声に返事はない。
少し進むと、寝室から綾女のうめき声が聞こえてきた。
- 現代版
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