綾女はどこをどう走ったのかわからなかった。
気づくと真っ暗な山中にいた。
昨日より夜目が利くようになった綾女には、そこが刀を発見した場所であることがわかった。
頬を涙が伝っていた。
「どうして泣いているんだろう」
涙をぬぐう。
左近の困った顔がショックだった。
「でも別に好きだと言われたわけじゃないし。昨日会ったばかりだし。でもどうしてこんなに辛いのかな・・・」
刀が埋もれていた場所がひどく懐かしく、辛い場所のように思えた。断片的に、フラッシュバックのように誰かを看取ったことを思い出した。
「誰?私は誰か大切な人をここで看取った・・」
地面に触れる。
「そう、ここで大好きだった人が亡くなったのよ。その人は太刀を持っていて、いつも私を守ってくれて・・」
「綾女、こんなところで」
左近が息を切らしながら現れた。綾女が立ち上がるより先に左近が駆け寄り、深く抱きしめた。
「ごめんなさい」
「どうしてここに?」
「わからない。いつの間にかここにきていたの。なぜか涙が溢れて止まらなかったの」
左近は綾女が落ち着くよう、ゆっくり背中を撫でていた。
「さっきはごめん」
左近が謝った。綾女はそれ以上聞きたくなかったので、笑ってごまかそうとした。
「いいよ、私気にしていない」
「俺が困った顔をしたのは、まだ俺が綾女に好きだと言わないうちに、龍馬が言ってしまったからなんだ」
「えっ」
綾女が涙に濡れた瞳を左近に向ける。
「好きだよ、綾女」
「左近・・・」
綾女は左近に擦り寄った。
- 現代版
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