東京駅に二人の女性が降り立つ。
高校を卒業し、この春からそれぞれの生活を始める佳代と綾女だった。
「来週には結婚式だね、佳代」
「うん」
佳代は龍馬と婚約しており、もうじき花嫁となる。
綾女は左近が卒業した大学に入学する。
二人は大学へ向かった。
去年もここで待ち合わせたんだっけ・・・
その時撮った左近の写真は、今もベッドのサイドテーブルにある。
「綾女、綾女」
佳代の声にはっとする。
「私、龍馬と一緒に帰るわね。来週、式で会おうね」
佳代は幸せそうに、龍馬と行ってしまった。
左近とは4ヶ月ぶりの再会となる。
住まいを探しに1月の終わりに来たが、会うことはなかった。
綾女は左近のマンションの近くに部屋を借りた。
今朝、高校時代を送った部屋を引き払った。何かと思い出に溢れた部屋だった。明日、荷物がこちらに着く。
「今晩は左近のところに泊まるようだわ」
独り言を言う。
「ほほう、それなら俺は今晩は遠慮しようか」
蘭丸がいきなり現れた。綾女が振り向く。
「蘭丸。そういえば左近の隣だったわね」
蘭丸は綾女をじっと見つめている。
「きれいになったな。安土で会ったときはまだ青いガキだったのに。どれ」
蘭丸が両手で綾女の胸を触る。
「ほう、これは。左近によほど愛されているんだな」
「な、なにを・・」
真っ赤になった綾女に蘭丸はひっぱたかれる。頬に赤い紅葉が浮かび上がる。
「褒めたのに。大きくなったと褒めたのに」
「うるさい、うるさい」
綾女がこぶしを握り締める。蘭丸はからかうのをやめた。
「でもまぁよかった。もとはといえば引き合わせたのも別れさせたのも俺だしな。今生では幸せになれよな」
蘭丸は去っていった。
「綾女、待たせたな・・・」
「左近」
さらにきれいになった綾女を見て、左近は驚く。会うたびに美しく、慕わしくなる綾女。恋をしているからか。
「どうしたの?」
「あ、いや、帰ろうか」
「うん」
二人、手をつないだ。左近の大きな手が綾女の手をしっかり包み込む。
「あのね、今晩泊めさせてもらえるかな。明日荷物が来るのよ」
顔を赤らめながら綾女が言う。左近は二つ返事で承諾した。
1年ぶりの左近のマンション。二人は見つめあった。
「久しぶり、だな」
「うん」
「俺に会えなくてさびしかっただろ」
「ちょっとはね。でも車の免許を取っていたから、それで気が紛れていたんだ」
「免許取ったのか」
「うん。まだ自分の車はないけれど。左近は運転できるんだっけ」
「そりゃ出来るよ。今度からドライブも出来るな」
「そうだね、楽しみ。お弁当作って天気のいい日にお出かけして」
「綾女」
切なげな瞳で左近が迫ってくる。
「あ、と、お、お風呂、お風呂入ってからね、ね?」
「そうだな、一緒に入るか」
「え・・・」
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