「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

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習い事2

それから1か月。
仕事をしながらピアノのレッスンを進める綾女。
防音工事はしていないが、もともと自宅の周りには何もない。よほどの深夜でなければ、常識的な時間内で自宅レッスンはできた。
「右手と左手で違う動きをするなんて、最初は考えるのもこんがらがっていたわ。でもできるものなのね」
”こぎつね”を両手で弾けるようになり、綾女はうれしかった。
「それにしても左近は、私の前では絶対にバイオリンやピアノを弾かないのよ」
レッスン後のコーヒータイムで、綾女は佳代にこぼした。
「本当は買っただけでできないんじゃないかしら」
「どうだろう…人によるかもしれないけれど、龍馬も私の前ではチェロ弾かないわよ。でもこの間買い物から帰ってきたら弾いていて、すっごく上手なの。びっくりしちゃった」
「え、龍馬さんもチェロやるの?気づかなかったけれど、結構楽器を弾ける人がいるのね」
綾女はまたまた驚いていた。
翌日。
仕事が早く片付いたので、2時間ほど早く帰宅した綾女。
自宅からピアノとバイオリンの音色が聞こえてきた。少し聞こえては止まり、ピアノだけ、またはバイオリンだけ聞こえる。一緒に聞こえることもある。
そっとリビングの窓からのぞくと、蘭丸がピアノの前に座り、左近がバイオリンを構えている。そして同時に弾き始めた。
よどみなく流れる切なげな音色。5分ほどでその曲は終わった。
「ただいまー」
声をかけるとともにリビングに直行した。2人とも動じない。
「聞いていただろ、窓の外で」
「聞いていたんじゃなくて、聞こえてきたからいただけよ。それにしても、ふたりともすごい。左近もそんなに弾けるなんて」
「じゃあ、今度左近がピアノ弾けよ。俺が編曲した、とってもいい曲だ」
左近はうなずいてピアノの前に座った。代わって蘭丸がバイオリンを構える。
流れはじめたのは、映画やドラマで使われたあの曲。
綾女は当時の想い、かつての想いが一気に溢れ出し、手を胸に当てて聞いていた。
「私ね、思い出したの」
「何をだ」
「あの時、左近が死にそうになっていた時、やっと自分の気持ちに気づいたこと」
左近の手が綾女の髪をなでる。
「左近を失いたくないって強く思ったの。好きとかそういう気持ちだけじゃなくて、あなたなしではいられないと」
「俺の気持ちは変わらないよ。あの時も、今も、綾女が好きだ」
優しく唇が触れる。綾女は恥ずかしそうに頬を染めた。
後日談。
左近は短時間に猛練習をしたため、腱鞘炎になったとかならないとか。

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