キッチンで綾女は奮闘していた。
「できたー!」
材料は昨日仕事帰りに揃えていたのだが、米だけは重くて買えなかった。
「うふ、ずっと作ってみたかったのよね。パエリア・・・でも多かったなぁ」
ふたつの皿に盛り分けたパエリアを見て、綾女はふと思いついた。
「はい」
「あの、綾女です」
すぐに左近が現れた。綾女の胸が高鳴る。
「あの、先ほどのお礼というわけじゃないんですけど、これ、もしお食事がまだだったらいかがでしょうか・・」
おいしそうな匂いがするパエリアを差し出した。
「いい匂い。綾女が作ったの?」
「初めてで恥ずかしいんですけど」
左近は受け取った。その時お互いの手が触れ、綾女は思わず左近を見上げた。
「ありがとう。いただくよ」
「・・はい」
交錯する視線の中に、何かがうまれていた。
- 現代版
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