その晩。
綾女は人の声で目が覚めた。
誰かが会話している声。
「・・・!・・・っっ」
女性の声も混じっている。
綾女は急に覚醒してしまった。
隣の部屋から聞こえる声。それは綾女が聞きたくない男性と女性の声だった。
「いや・・」
綾女は両方の耳を塞いだ。隣の部屋には左近がいる。
左近には彼女がいる。それをこんな形で気づかされるのは、綾女にとって酷なことだった。
「私、馬鹿みたい・・」
自嘲の涙は枕を濡らしていた。
翌朝。
昨日とは比べられないほど、綾女はひどい顔になっていた。
「ああもう。昨日よりひどいじゃない・・」
瞼を冷やしてため息をついた。
出かけようとすると、出てきた左近に会った。
「昨日はご馳走様」
「あ、いえ、どういたしまして」
左近と目を合わせないようにして綾女は通り過ぎた。
「綾女?」
左近は不思議に思いながら綾女を見送った。
- 現代版
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