ああ、また降ってきた。
この身にはもう、濡れる冷たさがわからないけれど。
あの方は時折ここを訪れて、花を添えてくださる。
綾之介様…。
初めてお会いした時は、本当に男の方だと思いましたのよ。
でも男の方にしては華奢だし、私を抱き上げた時はこの細い体のどこにあのような力が、と思いました。
左近様も同じように痩せてはいらっしゃるけれど、綾之介様はもっと華奢で、女の方のように見えてきました。
私が逝こうとしたとき、泣いてくださいましたね。
その時に確信を持ったのです。
でも性別は関係ありませんでした。
私が好きになったのは、お人柄だからです。
私は、綾之介様の腕の中で逝くことができて幸せでした。
あれからどれくらい経つのでしょうね。
あの頃少年のようだった綾之介様はもう大人の女性として生きておられる。
でもその旅はいつまで続くのでしょうか。
今、目の前で綾之介様が花を供えてくれました。
でも、もういいのです。
私にはそのお気持ちだけで十分なのです。
あなたには左近様がついていらっしゃいます。だから寂しくはないのでしょうね。
左近様、風になってしまわれたけれど、綾之介・・綾女様を守ってくださいませね。
私はここで綾女様が幸せになれるよう祈っています。
雨は小降りになってきました。
ここでもう少しだけ雨宿りをしてくださいね。
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