「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. 時を超えた絆
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安土にて3

それから数日。
狭い建物の中で左近は伸びをした。
「そろそろ閉める時間よ」
先輩のおばちゃんが左近に声をかけた。ついさっきカップルが受付を終えて入山したところだった。左近はおもむろに建物から出た。
9月も半ばになると、朝晩が涼しくなる。それに夕方5時を過ぎると暗くなるのが早くなる。
「私は締めの処理をするから、左近さんは外の片づけをしてね」
「はい」
外のベンチの上に置かれた缶を捨てたり、杖の並べなおしをしていると、門の外から声がした。
「さ・こ・ん」
パンツスーツの綾女が門の陰からちょっと顔を見せ、そこに立っていた。にっこりと微笑む。
「もう帰れるの?」
「あ、ああ・・」
左近はチラッと建物の中を見る。中ではおばちゃんが締めの作業を終えたところだ。綾女はにっこり笑って、後ろ手に持っていた小さい紙袋を持ち直した。
「いつも左近がお世話になっています」
「あら綾女ちゃん、今帰り?」
「はい。今ね、能登川さんのところでお月見だんごを買ってきたんですよ」
綾女が窓の高さに紙袋を持ち上げると、おばちゃんは嬉しそうに目を細めた。
「あら、うちのお店に寄ってくれたの?いつもありがとうね」
「今晩お月見でしょ?事務所でもいつもおいしいって評判なんですよ。たくさんいただいちゃいました」
「嬉しいねぇ。左近さん、うちのだんごが固くならないうちに綾女ちゃんと食べなさいね。今日はもういいから」
「いいの?ありがとう。おいしいうちに左近と食べたいって思っていたのよ」
綾女の微笑におばちゃんは細い目が見えなくなるくらいに喜んでいた。
「さすがだな」
駐車場まで歩きながら左近が感嘆した。
「そう?だって本当においしいのよ。事務所で3つも食べちゃった」
どうやら綾女には自然に相手が喜ぶような術があるらしい。
「それに、能登川さんのところ、ご主人の和菓子好きが昂じてお店を始めたばかりじゃない。奥さんがずいぶん反対したらしいし。おいしいと言われて怒る人はいないからね。本当においしいから口コミも含めてね」
車に乗り込み、左近をチラッと見る。
「左近と一緒に帰りたかったから・・が、本音かな」
小さい声で呟き、照れ隠しに車を出した。

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