「ふう・・・」
そうじを終えて、左近は一息ついた。そろそろ徹夜明けの綾女が帰ってくる頃だ。
「それにしても残暑が厳しいな」
開け放した窓からは緑と化した安土山が見える。
「ただいま」
疲れた様子で綾女が帰ってきた。左近はそうじ道具をしまい、窓を閉め、クーラーをつけた。
「ありがと」
バッグをしまい、髪をほどいた綾女が脱衣室に入ると、左近はそっとドアに耳を寄せた。服を脱いでいく時の衣擦れの音。
・・・聞こえなかった。
「やれやれ、着物ならシュッとか聞こえてよかったのにな」
「何か言った?」
怪訝そうな綾女が急にドアを開けた。衣擦れが聞こえないのも道理、まだ脱いでいなかった。
「あ、ああ、いや、あ、あのさ、出たら何か食べるか?」
「そうね・・アイスコーヒー。あとは左近に任せるわ。覗いちゃだめよ」
いたずらっぽく微笑んで綾女はドアを閉めた。
「♪〜♪♪」
左近はすっかり機嫌がよくなり、鼻歌交じりにコーヒーを淹れはじめた。
カラン
グラスの中で氷が音を立てる。
「おいしい。左近が作ってくれるのってみんなおいしい」
サンドイッチも左近が手早く作ったものだ。綾女はニコニコして食べている。左近もつられてニコニコしている。
「嬉しいな。そうじがきちんとできて、ご飯も作れて。ここのところ任せっきりでごめんね」
「いや・・・」
左近の瞳があることを訴える。綾女は赤くなるが、恥ずかしそうに頷いた。しばらくして綾女の姿がベッドルームに消えた。
そして・・・。
「うふ・・」
幸せそうな綾女の微笑。そばで苦笑する左近。
徹夜だった綾女はベッドに横になるとすぐに枕と仲良しになってしまった。左近は綾女にそっとキスをし、洗濯を回し始めた。
- 時を超えた絆
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