「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. 時を超えた絆
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安土にて5

彼岸花があちこちに咲いている。左近は通いなれた道を歩いていた。
朝晩はすっかり涼しくなり、半袖では寒いくらいだ。
「いってらっしゃい」
休みの綾女は、左近に朝食を作り、送り出した。洗濯の合間にせっせとお弁当を作っている。
「あ〜ん間に合わないっ。このお弁当、あとで持っていくからね」
「いくら俺だってこんなに食えるか」
「あらそう?」
平然と重箱に詰めていく綾女。結局おいしくて左近はすべて食べてしまう。だからといって体型は変わらない。
やがて勤め先の安土山が見えてきた。
「おはようございます」
開門の1時間前には必ず着く。おばちゃんに案内所の中を任せ、左近は安土山を一回りしてくる。朝晩2回必ず行い、それ以外にも入山者を案内したり、呼ばれたらすぐに出て行く。主に肉体労働担当。影忍だったときよりはかなり少ない運動量だが、それでも体型と筋肉は維持できている。
「左近さん、おはよう。今日は団体さんが10時と13時に入っているから、ガイドを頼みますね」
「はい」
にっこりと女性をとろけさせるような笑顔。おばちゃんもクラクラすることがある。そのうちに10時になり、20人あまりのおばちゃんたちが詰めかけた。
「こんにちは、あら、こちらいい男じゃないの」
「まー、本当。危なくなったら助けてね」
口々にしゃべりながら杖を持ち、左近を先頭にゆっくり登り出す。息切れしつつもおしゃべりは止まず、山の中にこだましていった。
「こんにちは」
「あら、綾女ちゃん。今日はお休み?」
「はい。お弁当を持ってきたんだけど、左近は案内中かしら」
「そろそろ戻ってくる頃よ。ほら」
おばちゃんたちの声が山の中からだんだん大きく聞こえてきて、囲まれながら左近が山を降りてきた。いくらか疲れた表情になっている。
「どうもありがとねー」
団体が去ると、すっかり静かになった。
「お疲れ様。お腹すいたでしょ。お弁当を持ってきたの」
おばちゃんはお昼には自宅に戻り、食事を摂ってから戻ってくる。
「ああ、腹減った・・・」
事務所の中で綾女がお弁当を広げた。おいしそうな献立がずらりと並んでいる。左近はお茶を一口飲んでから、おにぎりに手を伸ばした。
「あ、そうだ」
「何?」
左近を見上げる綾女に、左近はそっと唇を重ねた。それだけで綾女は耳まで赤くなる。
「いい加減慣れてもいい頃だろう?」
「だって・・やっぱり恥ずかしいじゃない」
そっと上目遣いで左近を見る。その表情がなんとも言えず可愛らしく、左近はまた唇を重ねた。
「いいからもう、食べようよ・・」
窓の外を気にしながら綾女が言い、唐揚げをつまんだ。
「いただきます」
左近はものすごい速さでどんどん食べていった。見る見るうちに重箱が空けられていく。その食べっぷりに綾女はニコニコしていた。
「午後からも団体さんが入っているんだよ。おばちゃんパワーだと結構体力消耗するからな」
お茶を飲んで一息つき、左近は呟いた。
「でも人気者なんでしょ?しっかり歯を磨いて、白い歯でお客さんをお迎えしなさいね」
「はいはい」
綾女はお弁当をしまいはじめ、左近は事務所を出た。

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