ゴツッ
「いたっ」
「洗面所の入り口はちょっと低いんだ。かがんで入らないとぶつけるぞ。俺の体に傷をつけるな」
「慣れれば大丈夫よ・・・」
おでこをさすりながら、綾女は洗顔した。手にチクチクとあたるものがある。
「も、もしかして、ヒゲっ?」
「そうだよ。毎朝だぞ。それに比べ、お前の顔はいいなぁ。つるつるしてひげもないし」
「当たり前でしょっ」
ヒゲを剃りながら、綾女は泣きたくなってきた。
「何で私が好き好んで毎朝ヒゲ剃りをしなきゃいけないのよ…。あ、ちょっと」
タオルで拭いただけで歯ブラシに手を伸ばした左近を呼び止める。
「ちゃんと化粧水と乳液もつけてよ。毎朝毎晩よ、いいわね」
「面倒くさいなー」
ぴちゃぴちゃと手で叩き込むようにしてつけ、左近は歯ブラシに手を伸ばす。
顔を洗い、化粧液をつけた綾女は左近が使っている歯ブラシを見た。
「やだそれ、私の歯ブラシじゃない」
「でも綾女の体に使っているんだぞ」
「う〜〜〜」
左近の歯ブラシをじっと見るが、綾女は新しい歯ブラシを出した。
「ごめん、やっぱり無理」
「失礼な奴だな」
- 時を超えた絆
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