起床から1時間。
すでにふたりは疲れていた。
「あー、疲れた」
綾女の体の左近は足を大きく広げ、椅子に浅く座り、天を仰いでいる。
「足、足閉じて」
「あ、ああ、そうだな」
朝食を作りながら、綾女はため息をついた。
「胡椒・・」
上の棚にある胡椒を背伸びせずに取り、綾女はくすっと笑った。
「この体、背が高いからいいわね。高いところに手が届くから、今度電球の交換の時は左近に頼むわ」
「それまでに戻っていればな」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
ふたり黙ってしまった。
「どうして入れ替わったんだろうね」
「何かがきっかけだったんだろう・・」
「きっと夕べのことよね」
「夕べか。いつもどおりお前を抱いて」
「違う違う、その前にちょっとケンカしたじゃない」
・・「もう、少しは私の体のことも考えてよ」
・・「俺の体のこともわかってくれよ」
「それだ」
「じゃあ、お互いに相手の体のことがわかるまでこのままなの?いやよ」
「話は簡単さ。わかればいい。この機会だ、男と女の体がどんなものなのか理解して、実行するのみだ」
綾女はジーっと自分の顔をした左近を見ていた。
「まずひとつはわかったわ。それよりも、この状態がいつまで続くかわからないでしょ。周りの人に違和感を与えないように生活しなきゃ。言葉遣い、立ち居振る舞い、ボロが出たらいけないから、しばらくは一緒に行動しましょ」
綾女は立ち上がり、片づけをはじめた。
- 時を超えた絆
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