左近が発つ前夜。
春近しとはいえ、まだ庭の梅はほころびだしたばかりだ。
あの一件以来、久しぶりに綾女の部屋に来た左近は、綾女と話をしていた。
「明日、発つのね」
「そうだ・・」
「お帰りは?」
「桜の頃だろうな」
「そう。きっと、ご無事で帰ってきてね。私、待っています」
寂しさをこらえている綾女は、瞳が潤んでいる。左近の体が動き、気づくと綾女の体を抱きしめていた。
「左・・近?」
緊張して硬くなっている綾女。その緊張をほぐすように、左近の暖かい手が背中や髪をなでている。
「帰ってきたら、綾女を妻に迎える」
甘い声が綾女の耳元で囁かれた。そして頬にそっと口付けが落とされる。
「待っていてくれ」
左近が部屋を出てしばらく経ってから、綾女は真っ赤になった。
「今の、結婚の申し込み・・きゃぁっ」
熱くなった頬を冷まそうと、手のひらを当てるが、ますます熱を持ってしまう綾女だった。
翌朝、左近と綾女は熱い視線を絡めてしばしの別れとなった。
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