「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. あの時代
  2. 36 view

忍びの姫5

夜。
綾女は左近と向き合って座っていた。
脇には、ひと組の寝具。そしてふたつの枕。
「皐月殿ではないな」
綾女ははっとして左近を見上げた。
そうだ、今まで姫さまと呼ばれ、名前は呼ばれていなかった。
「私は…」
「たしかに」
左近の手がそっと綾女の顎を持ちあげ、正面から見据えた。
「面差しは似ている。双子の姫だからな」
綾女は左近から目をそらせずにいた。このような形で男性と近づくのは初めてだった。
「綾女」
左近の吐息がすぐ近くまで来ている。綾女は無意識に瞳を潤ませていた。思わず目を閉じてしまう。
ふいに左近の気配が離れ、綾女は目を開ける。
「長旅で疲れただろう。今宵はゆっくり休むがよい」
左近は布団に身を横たえた。
綾女は心中穏やかではなくなった。膝の上に置いた手に力がこもった。
「私が、皐月ではないからですか」
静かな、悲しみさえ混じった声。
「私は、姉の代わりにここに参りました。それも定めと」
「定め?定めか」
左近が起き上がり、綾女を見る。少し怒ったような表情である。
「定めにただ従うだけの姫なのか?それならば、話は別だ」
左近は綾女を押し倒した。
「忍びの姫は房事に長けていると聞く。そのお手前を拝見しようか」
組み伏したまま左近は綾女を見下ろした。綾女は抗ったが、男の力にはかなわず、やがて体の力を抜いた。
左近は黙って綾女を見つめている。綾女はいたたまれない気持ちでいっぱいだった。目を反らしては負けだと気持ちを奮い起して左近を睨む。
「これはこれは、たいそうなお手並みだ」
左近は手を離し、声に笑いを含ませた。綾女はかっとなった。
「…それで?」
左近の声に、気づくと綾女は左近を押し倒していた。我に返って顔を真っ赤にする。左近は肩を震わせて笑った。
「な、何を笑っているのです」
「気に入った。俺の妻にふさわしい」
左近はそのまま腕を伸ばして綾女を抱きしめた。逆毛だった猫をなだめるように髪をゆっくり撫でる。いつしか綾女は左近の腕の中で寝息を立てていた。

あの時代の最近記事

  1. つなぎとめて3

  2. つなぎとめて2

  3. つなぎとめて1

  4. 覚醒3

  5. 覚醒2

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


カテゴリー
アーカイブ