里長の娘であるため、幼い頃から忍びの術は鍛錬してきた。
だが、人には得手不得手というものがある。
綾女は調略や身体能力に秀でていた。まさしく、父に男であればと言わしめたほどの腕前である。兄の進之助はそれに加えて統率力に長け、姉の皐月は女であるゆえに必要な閨の術にも長けていた。
それゆえに、今回のような入れ替わりが生じてしまったのだが、綾女は見聞きした程度で一向に上達はしなかった。
対して、左近はその恵まれた容姿と体格、体力で、同世代の男性よりはるかに多くの経験を持っている。だからといって溺れるようなことはなく、気に入らなければその場限り。その手練手管はよほどの人妻でない限り、落としていた。
それだけではなく、忍びとして十分な素養も併せ持つ。その技は進之助を凌ぐほどである。特に気配を断つことは誰の追随も許さなかった。
夕暮れの庭。
綾女は外に出て空を眺めていた。
晩秋の空は暮れるのが早い。ひとつふたつ星が見えてくると、綾女は気配を感じた。
「左近。いつからそこにいるの」
「今気づいたのか。相変わらず鈍いな。先ほどからお前を探していたが、すぐにわかった」
左近がそばに現れ、そっと綾女の肩を抱いた。
「冷えたな。中に入るぞ」
綾女は言われるままに部屋に入った。
そこにはひと組の布団が敷かれてある。毎晩同じ布団で寝ていたが、何も変わらない夜が続いていた。
だが今宵は違った。
綾女は左近によって、少女から女性へ一気に駆け上った。
明け方。
左近はやっと綾女を解放した。
初めてだが何度も抱かずにはいられなかった。
着物に隠れていた体は熟しかけた果実のように瑞々しく、まさに今花開こうとしていた。
痛みに耐え、何度となく意識を手放し、綾女は疲れ切っていた。
胸元にひとつ咲いた、愛の徴。
左近は満足げに綾女を抱きしめ、しばしの朝寝にまどろむのだった。
- あの時代
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