明かりがいらないくらいの月夜だった。
いとも簡単に障子を外し、俺が部屋に入ると、綾女は布団の中で警戒心を強めた。
「また来たのか」
「夜這いに来た」
綾女が逃げようとしたが、その前に俺は綾女を捕まえていた。
「背中を見せるな。基本中の基本だろう」
綾女が結い上げていた髪を、俺は下ろした。しっとりと流れるつややかな黒髪。綾女が潤んだ瞳で見上げる。
「夕べの夢を教えてくれ」
綾女は恥ずかしそうに俯いた。俺は捕まえていた手を離した。綾女の顔が幾分紅く染まっている。もう逃げるそぶりは見せていなかった。
「正夢になって・・驚いている」
ほのかに綾女が囁いた。
「左近が悪い。夢の中でも、今でも、こうして私を惑わせている」
夢で左近のことが好きだと自覚し、朝さらに口づけまでされ、今こうして左近と向き合っている。そう綾女は言葉少なに左近に訴えた。
「迷うことはない、自分の思いに素直になればいい」
綾女はやがて左近に擦り寄った。
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