「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. あの時代
  2. 132 view

本当の気持ち23

あれから幾夜たったことだろう。
いつの間にか綾女は左近の背中にくっついて眠るようになっていた。
夜具もひとつしか敷かなくなった。
本当に安心しきった表情。
左近は綾女を思いやって、自分の想いを抑え込んでいた。
春の夜は少しずつ少女を女性へと変えていく。
綾女は桜の花に誘われるように、咲き誇る場所を見つけた。
「これは何と美しい。あでやかな桜だ」
まだ満開ではないが、満開になればさぞ美しいだろう。夜桜ともなれば、魔を感じさせるほど艶かしく咲くだろう。
「お前のようだな」
そばに立つ左近が眩しそうに綾女を見つめる。
この頃ふとした時に、綾女は女性の表情をする。背も少し伸び、もう忍び装束よりも着物が似合いそうな年頃になっていた。
「私は桜の精か」
綾女が笑う。その手をとり、左近は袖の中に抱き込んだ。綾女も抗わず、おとなしく腕の中にいる。
「今宵、そなたを愛でたい」
綾女は返事の代わりに左近に回した腕に力を入れた。
盃に桜の花びらが一片、舞い降りた。
綾女はそれをつまむと、花びらについた酒をちゅ、と音を立てて吸った。
庭から夜桜が見える。昼間見た桜と比べるとずいぶん小ぶりだが、それでも美しい。
「夜桜は、人を惑わせるものか・・」
綾女は楽しそうに左近を見る。目元がうっすらと染まり、唇も紅を差したように紅かった。妖艶な美女という形容がふさわしい。背中にくっついて寝ている人物とは別人のようである。
「惑わされてみようか・・」
綾女が持つ盃の酒を飲み干し、左近も答える。
盃が落ち、カランという乾いた音を立てた。

あの時代の最近記事

  1. つなぎとめて3

  2. つなぎとめて2

  3. つなぎとめて1

  4. 覚醒3

  5. 覚醒2

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


カテゴリー
アーカイブ