「左近、お前も苦労するな」
蘭丸の声に左近は涼しげな表情で返した。
「なに、押して駄目なら引いてみる。それだけのことだ」
「図ったのか」
「初めのうちはそんなつもりはなかったんだがな。まあ、あいつの熱い頭を冷やしてやろうとしただけだ」
左近は両手をじっと見た。その目が緩んでいたのを、蘭丸は見なかったことにした。
「俺はお前に会った時から、お前だけを見ていた」
・・左近はそう言った。
何度その優しさに救われたことだろう。私はずいぶんひどいことを言って、左近を傷つけてしまった。左近、済まない。・・
綾女はそっと自分の乳房を持ち上げてみた。自分の手ではあふれてしまうが左近の手では何とか納まっていた。左近の手の感触がよみがえる。
とくん・・・
胸が熱く疼いた。
左近の前では素直になろう。私自身に戻ろう。
綾女は湯から出た。
ひとつの部屋に敷かれたふたつの夜具。
左近は背を向けて眠っているようだった。
「左近、起きているか?」
無論起きていた。だが左近は寝たふりをしていた。
「悪かったな。ひどいことを言ってしまった。これからは、左近の前でだけ素の自分になれるようにしてみる。私も、左近が、す、好き、だからっ」
恥ずかしさを隠すように綾女は布団にもぐりこんだ。
左近は思っていた通りの展開に少し微笑んだ。
とくん、とくん、
綾女の甘い疼きは治まらない。わずかに頬を染め、左近の広い背中を見る。
・・なぜだ、眠れないどころか、左近に触れたい・・
あの広い背中の下で幾度抱きしめられただろう。綾女は夜具から身を起こした。
しゅ…。
衣擦れの音が左近の耳を捉えた。甘い香りが近寄ってくる。背中にそっと綾女の手が触れた。そこから左近の全身に熱が伝わる。左近の夜具に綾女が身を滑らせ、背中に顔を押し付けた。
「あたたかい・・・」
綾女の胸の疼きは治まり、安堵でいっぱいだった。そのまま安らかな寝息を立てていく。左近はその寝顔に唇を落とし、抱きしめて眠りについた。
- あの時代
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お返事有難うございました!
こうなったらいいのにと長年思っていた通りの展開で、ワクワクしながら読ませていただきました。
(*・・*)ぽっも、素敵です。読んでいて一番ドキドキしました。原作だとキスまでだったので、やはり結ばれるべき二人なんですわ!
これからも楽しみにしております☆
コメントありがとうございました。
書きながら私も、この二人はどうなっちゃうんだろうと、楽しんでいます。
またいらしてくださいね。