それからというもの、左近は隙さえあれば綾女にキスをし、抱きしめていた。
「もう、左近。だめ」
綾女が照れて赤くなっていても、その腰を抱き寄せて唇を重ねる。
慣れさせるため・・であった。
夜着を着て見つめあうふたり。
いつもより熱い左近のキスで綾女はとろけた。そしてとうとう夫婦としての契りを交わす。
それから毎晩、ふたりの部屋の明かりは消えることはなかった。
すっかり男らしさが増した左近。そして見る見るうちに芳しい花になった綾女。誰が見てもふたりが愛し合っていることは見て取れる。
「この分なら、夏ごろには兆しが現れるかもしれんな」
左近の父も頬を緩ませている。
しかし年が明けても一向にその兆しは見られなかった。
それは綾女が一番気にしていた。
「私の体がいけないのです」
ある晩、左近を拒んで綾女が呟いた。
「私は世継ぎを産まなければならないのに、一向に懐妊しません。これ以上はもうおやめください・・」
「何を言うのだ」
「私の母も子ができにくい体でした。父も側室を迎えようとしていました」
「だが、進之助殿も綾女も、その母の子ではないのか?」
綾女は力なく頷いた。涙が夜着の膝に落ちた。左近は優しく抱きしめ、髪を撫でた。綾女は嗚咽をこらえていた。
「申し訳・・ありません・・」
- あの時代
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