里の夕方。
人目を避けるようにひとりの若い女が着物を肩から滑らせる。
そしてゆっくりと湯に浸かる。
白い肌が夕焼けに染まる。
「ふう・・・」
ドボーン!
綾女の目の前に男が飛び込んできた。
「いよぉ!綾女!」
頭からお湯をかぶった綾女は身体をとっさに隠した。濡れた前髪を男の指が優しくぬぐう。
「左近・・?」
左近にそっくりだが、髪は金色だった。そして左近以上に自信過剰な態度。綾女の身体を抱き寄せ、唇を重ねようとした。
「いやぁぁぁ!」
綾女がその男を突き飛ばした。男は少しよろけたが、口の端に笑みを浮かべた。
「また会おう」
自信たっぷりに湯を出て行った。
「な、何、あの男」
綾女は大きく息をついた。
綾女が屋敷に戻ると、見慣れた左近の姿があった。
「綾女、戻ったのか」
綾女は左近をじっと見た。茶色い髪。
「左近・・・だな?」
左近は綾女に軽く唇を落とした。とたんに赤くなる綾女。何度もしてきたことなのに、いまだに綾女は恥ずかしがる。そんな綾女を左近はやさしく見つめた。
- あの時代
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