後を追った左近は、程なく綾女を見つけた。竹に寄りかかり、涙をぬぐっていた。
「バカみたい・・」
自嘲めいた言葉が聞こえる。左近は気配を消して綾女の背後に回った。
「甘い言葉に惑わされた私が愚かだった・・」
左近は胸が痛んだ。綾女の心を傷つけてしまった。
「綾女、すまなかった」
後ろから抱きしめると、綾女はもがいた。
「離せ、左近。いまさら言い訳など聞きたくない」
「お前が好きだ。離せるものか」
「いや・・っ」
左近は綾女の唇を奪った。深く長くそれは続き、やっと離れる。
「好きなら、どうして賭けたりした」
「喜平次を納得させるにはああいうやり方しかなかった」
「喜平次が勝っていたら、どうしていた」
「もちろん、奪い返していた」
唇が触れ合う。
「私の気持ちは・・考えたのか」
「ああ。すまなかった」
「もう、二度とこのようなことは、しない・・で」
残りの言葉は左近の唇に吸い取られた。
その様子を遠くから見ていた喜平次。
「雨降って地固まる、か。うまくやれよ、左近」
綾女への淡い想いを心に納め、喜平次は立ち去っていった。
- あの時代
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