「もう、左近たら」
俺の嫉妬を感じ取った綾女はくすくす笑った。
「何がおかしいんだ」
俺は憮然とした。ビーチチェアの上でパーカーを羽織らせた手は綾女を抱くような体制になっていた。見つめあうふたり。吐息がすぐ近くで触れ合う。そして俺の乾いた唇が綾女の唇に触れた。
「や・・」
大きく目を見開いた綾女は顔をそらした。
「あ、ごめん・・」
俺は我に返って体を離した。
夕方。
一緒に帰ってきたふたりは、綾女の家の前で別れた。
「今日は・・ありがと」
にっこり笑った綾女はいつもと変わりなく明るかった。
「あ、ああ」
「じゃね」
手を振って綾女は家に入っていった。
俺はシャワーを浴びていた。剣道で鍛えている体からお湯が滴る。海に行った割に日に焼けていない。
綾女の笑顔と間近で見た戸惑いの表情。そして、柔らかい唇。
あの雨宿りの日から綾女は俺の心に住みはじめている。
「もしかして俺は・・・」
口に出してみて俺は、自分の心に気がついた。
- 現代版
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