「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. 現代版
  2. 14 view

花火大会

歩いていてふと目にとまった、町内会の掲示板。
「安土山花火大会 2013年8月23日 19時から」
「4尺玉30発あり」
空の中心で愛を打ち上げます
絵も何もなく、印刷された紙が貼られていただけ。
4尺玉なんて一番大きい玉なので、個人というより企業が絡んでいるのかもしれない。
でもこの紙、企業にしてはどうかな、とも思う。
「ああ、見たわよ、あの紙」
喫茶”葉隠れの里”で佳代が言った。蘭丸の関係で今回の花火大会が開催されるが、火薬を扱っている家があり、そこの娘は小さいながらも火薬の調合に長けているとのこと。色白で黒髪のおかっぱの、かわいい子だそうだ。
「香我美ちゃんていうらしいわよ。まだ10歳なんですって。小さい頃から火薬玉を手まりのように扱っていたらしいわよ」
「そうなの?うちのベランダから安土山全体が見えるのよ。よければうちに来ない?」
綾女が誘った。佳代は少し頬を染めた。
「うちからも見えるのよ。龍馬と二人きりで見たいかなぁ・・・なんて」
「あはは、ごちそうさま。じゃ、またね」
安土山の周辺には何もない。結構、見える範囲は広いのかもしれない。
帰宅した綾女は、仕事をしている左近の背中に声をかけた。
「ねぇ左近、今日安土山で花火の打ち上げがあるんだって」
「ふーん、花火かぁ・・・」
「でね、そこの町内会の掲示板に貼られていたんだけど、「空の中心で愛を打ち上げます」って書いた上に消してあるのよ」
「・・・なんだろうなぁ」
一向にこちらを向かない左近に、綾女は面白くなかった。
「うちのベランダからなら全部見えるし、左近と一緒に見たいと思っておつまみ色々買ってきたし・・・浴衣着るし・・・」
「浴衣!?」
いきなり左近が反応した。綾女はびっくりしておつまみの袋を落としてしまった。
「何?何でそこだけ反応するの?」
「いや~、浴衣かぁ~、じゃあぁ~俺もぉ~着ようかなぁ~~」
言いながら目を泳がせ、猛然と仕事にかかり始めた。
18時55分。
あのあと瞬間的に仕事を終わらせた左近。浴衣の胸元を少し着崩し、逞しい胸をちらりと見せている。ベランダに用意したビール、おつまみ、簡単な食事を鼻歌交じりでセッティングしている。
「お待たせ」
お風呂上りの髪をまとめ、浴衣姿で現れた綾女に左近は見惚れた。
ああ、うなじ・・・色っぽい。それにとてもきれいだなぁ・・・。
「もう19時ね」
ベランダの椅子に座る。
大きめの花火が数発打ちあがる。雲ひとつない夜空にきれいに咲く花火。花火が炸裂するドーンという音が、体に響く。隣りに座っている綾女から、シャンプーの香りがする。
左近はドキドキして無理に花火に意識を向けた。
綾女も色っぽい浴衣姿の左近にドキドキしている。時々耳元でささやく声。触れ合う肩。
ドーン!
ひときわ大きい花火が上がった。
「あっ」
綾女が息を飲む。
”あやめ、あいしている”
夜空にくっきりとピンク色の文字が浮かんだ。
”あやめ、だいすきだ”
「あ・・・あれ何?もしかして左近?空の中心で打ち上げるって、あれのこと?」
左近は照れた顔を見られたくなくて綾女にキスをした。
「はぁ・・・んもう・・・いきなりぃ・・・」
舌を絡められて綾女は蕩けそうだった。
「本人に言うなんて、恥ずかしいだろ?」
「花火の方が恥ずかしいよ・・・みんなに知られちゃったよ・・・」
「公認の仲なんだからいいじゃないか」
言いながら左近がもう一度軽くキスをした。
「あ、ほら見てみろ」
”りょうま、だいすき”
”かよ、だいすき”
ハートに囲まれた最大の花火が上がった。
「あそこの夫婦もやっていたんだなぁ、な」
「そうね、でもこれ高かったんじゃないの?」
左近の目が泳いだ。そんな左近に綾女は体を寄せた。
「ありがと」
囁くような甘い声。
翌朝、綾女は浴衣を洗って干していた。
「んふふん、今日もいい天気でよかった」
鎖骨のそばには赤い印がちらりと見えていた。

現代版の最近記事

  1. ぬくもりを求めて

  2. 暑い日

  3. 夏涼み

  4. 桜花

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


カテゴリー
アーカイブ