夏の暑い夜。
左近が数本のこよりを持ってきた。
里の妖魔を退治したお礼にと、一晩だけ宿を借りることができた。そして里の子供が線香花火をくれたのだった。
「左近には似合わないな」
くすりと綾女が笑うのを、左近は少しむっとした顔で返した。
ろうそくに火をつけ、まず1本に火を移す。
小さな火花が散り、それを綾女が持ってじっと見つめていた。その綾女を左近が見つめる。
「知っているか。この線香花火が最後まで落ちなかったら、願いが叶うそうだ」
言いながら綾女が左近に顔を向けると、左近は慌てて目をそらせた。
暗いからわからないが、その頬が薄く染まる。
最後の2本。1本ずつ持ち、2人並んで花火を見つめていた。
「あ」
綾女のかすかな声とともに、ぽとり、と花火が落ちた。しばらくして左近の花火も落ちる。
わずかな明かりすらなくなり、辺りは暗闇。それでも影忍である2人にはまわりが何となく見えていた。
「願いが叶うとは、本当なのか」
「さぁ、でも昔から言われ続けていることだから、あながち嘘でもない・・・」
左近は綾女の手をそっと握った。
「俺の願い、叶うか?」
綾女の答えは、そのまま左近の唇に吸われていった。
「これが、左近の望みだったのか」
眠ったかに思えた綾女が呟いた。左近は黙って絡めた指を動かす。枕には綾女と左近の髪が交じり合っていた。
綾女は何の抵抗もなく、左近の思いに身を任せた。恥じらいと怖さと併せ持つ、今はただ一人の女として左近を見、左近も一人の女として綾女を見ていた。かすかににじむ涙と悲鳴とともに、綾女は左近を受け入れたのだった。
「俺は、綾女とこうなれて嬉しいぞ。何よりも、温かい布団の上で初めて抱けたんだからな」
そうか、と綾女は思った。野で動き回る自分たちに安住の地はない。ましてや布団で寝ることはわずかな機会に他ならない。布団の上で、普通の生活を送る人として、精一杯の生活の保障として、左近は綾女に将来の関係を求めたのだ。
「それは・・・」
「夫婦として、これからもいて欲しい」
怖いほどに左近の真面目な瞳が綾女を見つめた。綾女は微笑んで、初めて自分から左近に口づけをした。
- あの時代
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こんばんは。
またこうして読めるのが嬉しくて、またお邪魔させて頂きました。
何度もすみません。(汗)
私も妖刀伝の事、書きたいのですが、上手く表現出来なくて。。。
今、妖刀伝の活動してられる方もなかなかいないみたいで。。。
ここで左近さんと綾女ちゃんに会えるのはとても嬉しいです♪
またお邪魔いたします♪
みや様
いらしていただけて光栄です。
>今、妖刀伝の活動してられる方もなかなかいないみたいで。。。
そうですねぇ。いくつかブックマークに入れているサイトさんを回っても、もう3年ほど活動された様子はないようです。私も2年ぶりですし。
気が向いたときに書いていますので、また見に来てくださいね。