ホテルのロビーでひとりの男が左近を待っていた。
左近より幾分若いが、やはり長身である。その容貌も左近に負けず劣らずであった。
「待たせたな、蘭丸」
「呼び出してすまなかった」
ふたりはゆったりとロビーの椅子に腰をかけた。
「お前が探していた女性だが・・」
左近は言いかけた蘭丸を手で制した。
「今、そこで会った」
蘭丸は軽く笑った。
「だろうな。ここに泊まっている。部屋もわかるぞ」
左近は無表情だった。
「何だ、聞きたくないのか?」
蘭丸が怪訝そうに尋ねる。
「泣いていたんだ、さっき。何があったのかは知らないが」
手を組んで左近が困ったような表情を浮かべた。
「ハンカチを渡して、名前を聞くので精一杯だった」
「お前は昔から女の涙には弱いからな。でもよかったじゃないか。長年の願掛けが実ったんだよ」
蘭丸は左近の指輪を見た。
「そうだな・・・。部屋はどこだ?」
蘭丸は綾女の泊まっている部屋を左近に教えた。
- 現代版
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