「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

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冬物語1

夏が終わり、朝晩の空気がだんだん冷えてきた。
綾女の推薦枠が決まった。第1志望の大学。
でもまだ気は抜けなかった。
11月下旬試験日。
論文と面接だったが、綾女は平常心で臨み、試験は終わった。
でも、でも・・・
試験は終わっても落ちる可能性があることから、綾女は勉強の手を緩めなかった。
時は過ぎ、今年もクリスマスの時期が来た。
左近は大学の研究室に助手として来春から勤めることになった。
お互いに学生生活に区切りをつける。
左近は綾女に連絡せず、ふらっと綾女の部屋を訪れた。郵便受けに分厚い封書が入っている。
「もしや・・」
左近は持って行きたいのを我慢した。きっと綾女は最初に見つけたがっているだろう。階段を登り、ノックする。
「はーい」
綾女が出てくる。白いセーターにジーンズ。髪は少し伸びていた。
「あ、左近。今日来る日だった?」
「いや」
「ごめん、そろそろ郵便屋さんが来そうなの。ちょっと見てくるね」
綾女は階段を駆け下りていった。階下で息を飲む声がした。
左近はその様子が手に取るようにわかり、くすくすと笑った。
「どうしよう、通知が来ちゃった」
綾女は本当に困っていた。開けるのが怖いのだ。
左近は綾女の部屋に入った。1年ぶり。だが机の上は参考書やノートが散乱していた。試験後も一般入試に備えて勉強していたんだろう。
綾女の細い指が震えながら封を開け、1枚の紙を取り出した。
「合格・・だって」
綾女は大きく息を吐いた。左近はその紙を覗き込んだ。大学名を読んで驚いた。
「お前が受験した大学って、ここだったのか」
「そうよ」
「だって京都の大学に行くって」
「最高峰の大学を狙ってみたの。行くならそこがいいじゃない」
「俺の後輩か」
「あ、電話しなきゃ」
綾女は長野の実家に電話し、合格したことを伝えた。うん、うん、とうなずきながら涙を拭いていた。電話を切ると携帯で合格証書を撮り、メールを打ち始めた。
「何しているんだ?」
「今電話したらね、母が出てとても喜んでくれたんだけど、父が証拠を見ないと学費を出さんて言っているらしいの。だからこうして」
送信した。
「すごいお父さんだな」
「そんなことないわよ。自分が一番に報告を聞きたかっただけ。だからもっともらしい理由でごねているの」
綾女の携帯が鳴った。
「あ、お父さん。うんうん、見た?そうなの、自分でも驚いているんだけど。うん、頑張る。お正月には帰るからね。じゃ」
綾女は届いた書類を全部確認し、封筒に戻した。左近に向き直る。
「左近、久しぶり」
そしてそのまま倒れてしまった。
「まったく、睡眠時間を削って勉強していたんだろう。困った奴だ」
綾女をそっとベッドに横たえる。
散らかっていた参考書を片付け、部屋の隅にまとめた。冷蔵庫を開け、食材を取り出して食事を作り始めた。

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