運命は奇なり。
冬の荒波が似合う日本海。石川に左近は生まれた。
名前もあの時と同じようにそのまま付けられた。
幼い頃から怜悧で合理的な、子供らしくない子供。
左近が4歳の年、長野で綾女が生まれる。
綾女もまた、あの時と同じ名前を付けられた。
男の子に混じって野山を駆け回る敏捷な子供。
運命の日まで、二人が出会うことはなかった。
「左近、おい、左近」
初老の教授が、背の高い青年を呼び止める。
返事もせずに青年は振り返った。
「何ですか」
前髪をかき上げる。
「お前、夏休みの間アルバイトをしてみないか。どうせ暇なんだろう?」
「どんなバイトです?」
「発掘作業だ。助手の龍馬が現場監督だから、その下で仕切ってほしい」
「ああ、安土城址の発掘ですね。いいですよ」
スーツにタバコ、ワイングラスとネオンが似合いそうな男だが、若干21歳だった。
「そうか、助かるよ。そうそう、地元の高校生も何人か体験させてほしいといってきたので、よろしくな」
「じゃ、試験が明けたら安土に行きます」
軽く手を上げ、左近は歩いていった。
左近はその長身と美形とドライさで女性に人気がある。高校生の頃から大人な関係は経験しているが、いずれも長続きしない。心ここにあらず、だった。
左近は誰かを捜し求めている。誰かはわからないが、会えば必ずわかるという確信が、彼にはあった。
- 現代版
- 68 view
この記事へのコメントはありません。