気の遠くなるような日々を、ただひたすら妖魔を狩ることだけを思って歩いてきた。いつの間にか季節も移ろい、世の中も変わってきた。
ようやく妖魔が減り、あと1匹を残すのみとなった。
その妖魔が棲む地、安土。
壮麗奇抜な安土城は永遠の眠りについていたが、近頃は発掘とやらいう作業で眠りから醒めつつあった。
忌まわしき地として近寄りもしなかった安土。同胞や愛する左近が亡くなった地。
そういえば・・・。
あの日、私の周りで風が止まり、左近の声が止まった。それ以来何も感じなくなってしまった。左近は私から離れて、成仏したのだろうか。
もはや、顔や声も思い出せない。ただこの気持ちだけがとどまっている。
「キエェェェェ!!」
突如として妖魔が襲いかかって来た。
「お前が最後の妖魔だ、散れ!」
妖刀が青白い光を放ち、妖魔は蒸発するように消えていった。
「終わった」
その場に立ち尽くす。自分の使命であった妖魔狩りは終わった。これでもう自分を束縛するものはない。私は一体どうなるのだろう。もはや人でもなく、自分の意志で命を絶つこともできない。
ふと人の気配で振り返った。
長身の男性。遠い記憶が手繰り寄せられる。
「左近!」
私は抱きついた。会いたかった。ずっと会いたかった。
こんな安らかな気持ちになったのは、どれくらいぶりだろう。
安心して、何もかも溶けていくようだ。
左近、私は自分の仕事を終えた。
これからはあなただけを見つめていきたい。
左近・・・・・・
綾女が抱きついた男性は、綾女の姿を一瞬見ていた。
自分を見て本当に嬉しそうな顔をして、そしてはかなく消えた。
左近の記憶を持たない、転生した左近だった。
綾女がいた場所には、すでに妖刀の力を失った錆びた小太刀が落ちているだけだった。
- あの時代
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