「ただいま」
左近が帰ってきた。
あわてて服をしまったので、綾女は指を挟んでしまった。
「痛!」
左近がその声を聞きつけて、綾女の部屋に入ってきた。綾女は服を無理やり押し込み、不自然に振り返った。
「どうした」
「ど、どうもしないよ、お帰り」
綾女の指に傷がついていた。左近はそっとその手をとると、傷に口をつけた。
「だめだなぁ、綾女は」
「あ・・」
胸が高鳴る。左近に聞こえそうなくらいに。
「やっと、返事してくれたね」
左近が安心したように微笑んだ。その顔は疲労がにじみ出ていたが、明るかった。綾女の手から手を離し、左近は寝室へ歩いていった。
「少し寝る」
「うん・・」
寝室のドアが静かに閉まった。
なんという迫力だろう。
しばらく左近の顔すら見ていなかった。
綾女はふぅっと息を大きくつき、左近を想った。
「やっぱり好き」
呟いた。
洗濯物を取り込み、たたみだした。
一緒に住むようになってからも、綾女は自分の下着は別に洗い、左近には見せなかった。左近は平気で綾女に洗わせている。実家で兄や父のものもたたんでいた綾女には、あまり抵抗はなかったが、左近が身につけていると思うと少し恥ずかしくもあった。
左近のものを寝室に置きにいく。
左近はぐっすり眠っている。きっと徹夜で資料を作っていたんだろう。綾女は布団をかけなおし、寝室を出た。
- 現代版
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