4月20日。左近の誕生日。
当の左近は昨日から研究室に泊まりこみ、昼頃帰ってくる予定だった。
綾女は朝からそうじ洗濯をしている。キッチンではシチューを煮込んでいる。
「ふう」
一段落し、ソファに腰掛けようとした時に電話が鳴った。
「綾女、私」
「佳代。久しぶりね」
「今、大丈夫?」
「え?うん、いいよ」
ドアホンが鳴る。そこにいたのは佳代だった。大きな袋を持っている。
「家の前にいたの?びっくりした」
「へへ、早い方がいいと思って」
綾女は佳代に上がるように言い、開け放していた窓を閉めた。佳代はあちこちを見ている。
「すてきね〜。ここでダーリンと暮らしているのね」
「暮らすって言っても、私はただ部屋を借りているだけだし」
「あら、寝るのは別なの?」
「それは・・・」
綾女は口ごもった。佳代は綾女の肩をたたく。
「わかってるよ。ダーリンは綾女を愛しているんだもの。綾女を見ればわかるよ」
佳代はニコニコして綾女を見ている。そして袋を開けた。
「そうそう、これね、私からのプレゼント。でも気にしないで。私がサイズを間違って注文しちゃったの。綾女なら合うかなと思って」
「何?」
佳代が手にしたきらびやかなもの。レースのカーテンのように一瞬見えるが、それは。
「ベビードールよ。私、いつもこれを着ているの。龍馬がもう大好きで。毎晩ね・・・。綾女?」
綾女は固まっていた。服として用を成さない。そしてこれは紐だけ。龍馬が好きなら左近も好きなのかな。
「もしかして、こういうのは初めてだった?」
「う、うん。ちょっとびっくりして」
「刺激が強かったかなぁ。でもね、ケンカしたときはこれが効くのよ。これで焦らして謝るまで触らせないのね。で、謝ってきたらやっと許してあげるの。そのぶん激しくなっちゃうけど、仲直りはできるわよ」
「仲直りねぇ。でも左近はこういうの好きかな」
「何言っているの、もうメロメロよ。綾女が着たら倒れちゃうかも」
佳代はふと時計を見た。
「あらいけない、もう龍馬が帰ってくるわ。ダーリンも帰ってくるでしょ?今晩はこれを着て仲良くするのよ。じゃあね」
「あ、ありがと・・・」
疾風のように佳代は帰っていった。しばし呆然と佳代が置いていった物を見ていたが、左近が帰らないうちにと手早くしまった。
- 現代版
- 25 view
この記事へのコメントはありません。