クリスマス以来、左近は綾女と連絡を取っていなかった。どう話したらいいものか考えあぐね、つい時間だけが経ってしまった。
「あ、もうこんな時間か」
人との待ち合わせのため、左近は家を出た。
「うっ」
この妖気、もとい色気は奴のものに違いない。
「お、左近」
「メガネをかけろ蘭丸、お前の気はセーブできないのか」
蘭丸はメガネをかけ、左近を見た。で、周囲の異様な気配に気がついた。
夕方の雑踏の中、垂涎の美男子が二人。女性の感嘆や男の殺気が異様に漂う。これできらびやかなスーツでも着ていればホストだ。
「い、行こうか」
「ああ」
足早にその場を去った。
蘭丸は春から左近と同じ大学に進む。そのため住む所を下見に来た。
「何で俺と同じマンションなんだ」
「一番いい条件で探しただけのことだ。左近と馴れ合うつもりはないぞ」
「だからって、何で隣の部屋なんだよっ」
「たまたま空いていたからだ。他に理由はない」
「俺より広い部屋に住むのか?」
「角部屋だからな。それに時々集会をするが、気にするな」
「何の集会だ」
「出雲の国では神無月に神が集まるだろう。それと同じようなことさ。多少騒いでも角部屋ならお前のところにしか聞こえないからな」
「妖魔の集会かよ・・・」
「閃光やつむじ風を出す奴や、手鞠に仕込んだ爆雷を持ち込む小娘もいるが、近所迷惑にならないほどの耐久性はあるだろう。巨大化はしないよう言い含めておく。防音も出来ているようだしな」
蘭丸は楽しそうだ。
「それと、この防音性なら、お前と綾女の睦みあいも聞こえんだろう」
左近はわずかに赤くなった。
- 現代版
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