片付け物をしていた綾女の手がふと止まる。
「今度は、いつ会える?」
左近に背中を向けたままだったが、寂しいと背中が言っている。
左近はそっと後ろから抱きしめた。
「すぐに会えるよ」
綾女の髪のにおいをかぐ。うなじからほんのりと甘い香りがする。耳元でそっと囁いてみる。
「あやめ」
綾女の体がぴくんと反応した。呼吸が速くなる。
「すぐっていつ、会えるの?」
左近は綾女のうなじに軽く唇を当てた。
「年明け」
左近がそっとうなじから肩にかけて唇を這わせる。
「だって、私、受験・・・あっ」
慣れない綾女は息も絶え絶えだった。足の力が抜けて手で必死に体を支えている。
「やめる?」
左近は真顔で綾女の潤んだ瞳を覗き込んだ。
「や・・・」
小さく呟く、つややかな唇。そのまま唇を奪う。
そして二人の唇から糸がつながる。
綾女は肩で息をしていた。
こんな左近は初めてである。怖い、とさえ思えた。
おびえを綾女の瞳から見出した左近は、時期尚早であったことに気がついた。
このままだと綾女を傷つけてしまう。
「今日はもう帰るよ」
左近は身支度を始めた。
「明日帰るんじゃないの?」
「ごめん。もう遅いから見送りはいらないよ」
綾女が涙をこぼしながら左近を見つめる。その視線が痛いくらいで、綾女を見てしまうと自分の衝動が抑えきれなくなると思った。
当然、綾女には左近の葛藤がわからない。
「私が怖がったから?ごめんなさい、私大丈夫だから」
左近は近寄りがたい雰囲気だった。左近もそういう態度でいなければ、今にも綾女を力づくで奪いそうだった。
荷物を持ち、玄関を出ようとしたとき、綾女が左近の背に抱きついた。左近が懸命に抑えていた衝動が音を立てて崩れそうになる。
「これからも、私は左近が好きよ」
それだけ言うと、家の中に入ってしまった。振り向いた左近の目に玄関のドアが映り、その奥に綾女の姿が見えた。そしてドアはゆっくりと閉じられた。
- 現代版
- 28 view
この記事へのコメントはありません。