「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

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風が舞う時11

さっぱりした綾女が発掘現場に行くと、振り分けが始まっていた。
「今日は俺とだ、よろしくな」
左近が綾女の姿を見て言った。
「はい」
「夜中に佳代ちゃんが来て、お前がうなされていると言っていたぞ」
「あ、それ多分いつもの夢。ここの所見ていなかったんだけどね」
「どんな夢だ?」
「うーん、あまり人には言いたくない」
「何でだ」
綾女はちょっと手を止めた。
「もしかすると前世かもしれないって自分では思っているの。でも信じない人もいるでしょ。小さい頃それを言って嘘つき呼ばわりされたことがあったから」
「俺は前世を信じる。その記憶も持っている。だから言ってみろよ」
綾女は手を止めずに言った。
「言わない。言ったら笑うから」
左近は綾女の手をとった。
「うなされるほど辛い夢なんだろ。俺は絶対信じるし、笑わない。もし俺が笑ったら何をしてもいい」
綾女は左近をじっと見た。
「左近の前世を聞かせてくれる?」
「いいよ」
左近は話し始めた。戦国時代に生きていたこと、影忍だったこと。妖刀のこと。安土のこの場所で、最愛の女性に看取られて死んだこと。
「その人のこと、今でも覚えているのね」
綾女が震える声を出した。
「私の夢と同じなの。私は、ここで、この場所で大好きだった人を看取るの。私は何もできなくて、ただその人が亡くなるのを見ているしかなかった。声を上げて泣きたかった。死なないでと叫びたかった。でも、それを言ったらその人はもっと辛いでしょう?その人は最期まで優しくて、私の注意を月に向けてその間に逝ったの。それから私はどうしたかわからない。でも小太刀を太刀の近くに納めて、多分この場所で死んだんだわ」
「そうか。俺とお前は同じ記憶を持っているということだ」
「そうなの?」
「俺が愛した女性は、綾女と言う名だった。今のお前と同じだ」
「名前は同じでも・・・」
「いや」
左近は強い声を出した。
「間違いなく綾女だ。姿、顔、生まれ変わりの綾女だ。俺はずっと何百年もお前に会うために想いをつなげてきた。死んでも思いは消えなかった。だからここでお前に会ったとき、息が止まるかと思った」
綾女は止まっていた息を出すように、大きなため息をついた。
「じゃあ、私が看取った人は、あなただったのね」
小さい頃から繰り返し見た夢。寝言で叫ぶことはいつも同じだった。逝かないで、死なないで、左近!
愛する人が死んだ時に、初めて自分の想いの深さに気がついた。
「もう夢でうなされることはない。俺がここにいる」
「左近、左近・・やっと会えたのね。これからは一緒にいるのね」
綾女は抱きついた。左近がしっかり受け止める。
「嫌だと言ってももう遅いぞ。すでに俺はお前を愛してしまった」
セミがうるさく鳴く中、左近と綾女は現世で初めてキスをした。

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