「綾女、綾女ってば」
「ん?」
「何ぼんやりしているの?」
佳代が興味しんしんに覗き込んでいた。
「もしかして、進展あったの?」
つい口元がほころんでしまい、綾女は照れた。そっと佳代に耳打ちをする。
「本当に?すごいじゃない。相思相愛か、いいわねぇ」
佳代がうっとりと、視線を宙に泳がせた。そして気づいたように綾女に向き直る。
「蘭丸は?告白されたんでしょ?」
「あ、うん・・・。悪いとは思うよ。だけど、自分の気持ちは偽れないよ」
「そうか・・そうよね」
気が重くなってしまう綾女だった。
帰りは蘭丸と一緒になった。
「綾女、昨日の返事を聞かせてくれないか」
「返事ね・・」
綾女は蘭丸をまっすぐ見つめた。
「ごめんなさい、私好きな人がいるの」
蘭丸は動じない。
「だから、俺の気持ちは受け入れられないということ?」
「そう・・。ごめんね」
それで引き下がる蘭丸ではない。綾女の肩をつかんだ。
「誰だよ、好きな男っていうのは」
「知って、どうするの」
「報告するのさ」
「報告って・・何を・・?」
綾女の体が震える。何をされるかがわかってしまった。そのままベンチに押し倒される。
「だめ、離してよ!」
足を動かし、蘭丸を蹴ろうとする。蘭丸はやすやすと手足を押さえ、上にのしかかった。
「言えよ。誰なんだ」
綾女は顔を背けた。蘭丸は軽く舌打ちをし、綾女から離れる。綾女は乱れた衣服を手早く直し、足早に去った。
- 現代版
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