シャワーから出た綾女は、ドレスを身につけた。左近とのディナーに備えて。薄く化粧をするだけで、綾女はさらに美しくなった。口紅を塗り、イヤリングとネックレスをつけた。あとは左近と会うだけ。
思えば、病院の外で会うのは初めてだった。そしてともに過ごす夜も。
予約した時間になり、綾女はひとりでレストランに向かった。
案内された席に腰掛ける。
テーブルの上には、グラスに入ったキャンドルが揺れている。
その炎が、綾女の顔立ちに影を落としている。
そっと時計を見ると、時間を10分過ぎている。
「遅れて、すまない」
綾女は視線を上げた。スーツの左近がテーブルサイドに立っていた。
「左近」
思わず綾女の瞳が潤む。安堵したからだった。
左近は綾女の向かいに腰掛け、優しい瞳で見つめた。
「白衣もいいが、そのドレスもよく似合うな」
「あ、ありがとう」
綾女は恥ずかしくなって、左近から視線を避けるように目を伏せた。長い睫が影を落とす。
ワインは綾女が生まれた年のものだった。ゆっくりと口に含み、味わう。
「おいしい」
綾女が微笑む。綾女のひとつひとつの仕草に、左近は見とれていた。
やがて食事が終わり、二人並んでテーブルを後にする。綾女の腰にそっと手を添え、左近がエスコートする。部屋に向かうエレベーターの中で、綾女はそっと左近に体を寄せた。
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