久しぶりの、束の間の静寂な夜。
不意に手渡されたそれは、細長い紙縒(こより)だった。
「なんだ?」
言いながらも綾女は手に取った。その表情がふっと和らぐ。
「懐かしいな・・。里にいた頃、時々やった・・」
その表情は優しく、懐かしむ表情だった。左近もまた、自然と微笑ましい気持ちで綾女を眺めている。
火をともすと、小さい火花が散りはじめた。
・・・ぽと。
燃え尽きた先が地面に落ちる。
「まだあるぞ」
左近が手渡す。綾女の表情をもっと見ていたかった。
「左近もしたらいい」
綾女は火をつけ、それを左近に持たせた。
「俺はいい。お前がやれ」
「いいじゃないか。もしかして怖いのか?」
左近は綾女の手をとる。触れ合ったところから熱が生まれ、左近の吐息が綾女の髪を揺らす。
「ならば、一緒に」
左近の低い声が囁かれ、綾女は鼓動が早くなるのを感じた。重なった手が震えないよう、息が上がらないようにするのが精一杯だ。
花火が燃え落ちても、ふたりはそのまま離れない。
綾女は左近の腕の中におさまっていた。
やがて、名残惜しげに左近の体が離れていく。
花火がくれた、ひと時の語らいは終わった。
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