夕べから降り積もった雪は、すっかりあちこちを覆い尽くしていた。
里の子供たちが庭先に飛び出し、雪合戦をはじめている。
「はうっ、ゆき」
あぐらをかいた左近の膝に立ち、障子を開ける子供。
「しゃこん(左近)、坊もいく」
「だめだよ、お前はまだ小さいから」
子供は膝の上で跳ねた。
「いくのぉー、坊もいくのー」
そこへ綾女が入ってきて、ぎょっとしたように立ち止まる。
「何をしているんだ、左近」
一番見られたくない人物に見られた気まずさ。
「見てわからぬか。何をしているように見えるんだ」
「子守、だな。どう見ても」
「そうにしか見えないだろうな。やはり」
子供が綾女を振り返った。
「あやー」
おぼつかない足取りで綾女のところまで歩いていく。綾女は腰を屈め、子供を抱き上げた。
「坊、よく歩けたね」
「あや^^」
きゃっきゃと笑う子供。綾女も笑顔で子供を見つめている。
「あ」
子供の小さい手が綾女の胸を触る。頬を染める綾女。左近がそれを見て
「ああ!」
とつい声を出してしまう。その声には子供は反応せず、胸の間に顔をうずめるようにして眠ってしまった。
「左近、子供の前で大きな声を出すな」
「子供はいいよな、何をしても許せるから」
子供と同じレベルでものを言う左近に、綾女は苦笑した。そっと左近が寄り添う。
「お前、いい顔をしているな」
「そうか?私もこのような子がほしいと思ってな」
思わず出た本音に綾女ははっとした。そんな綾女を左近は優しく見守った。
「いいさ、何を言っても。お前に似るのかな。それとも俺かな」
「え?」
綾女はどきんとした。まだそういう関係になっていないだけに、慌てた。
「さ、さぁ、坊に雪ウサギでも作ってやるかな」
それでも子供を起こさないように綾女は外へ出て行った。
「つべたいね、あや」
雪ウサギを子供が触る。そっと舐めたりもする。そんな子供を眺めながら、綾女はそっと思った。
いつか、このお腹に左近との子供が宿るのかな。でもそれも悪くないな。と。
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