次に左近が訪ねたとき、綾女は汗をかいており、自分で着替えようと体を起こしていた。
「大丈夫か?」
「大丈夫・・」
言いながら、片手でやっと身体を支えている。
「いいから。俺が拭く」
左近は綾女の帯を緩め、襟を広げた。晒しをしていない綾女の胸元がはだける。綾女は目を閉じて左近に身を預けた。
恥ずかしいが仕方がないという思いと、左近に身を預ける照れくささ。熱ではっきりしない頭の中にかすかに女としての疼きもあった。
「あまり、見るな」
背中を拭いてもらいながら左近に釘を刺す。
「仕方がないだろう」
新しい夜着を綾女にはおらせ、左近はむっとした声で装って答えた。薬湯を飲ませ、脱いだ夜着を軽くたたみ、左近は綾女をゆっくり寝かせた。大事なものを慈しむような優しい手つきだった。
「すまない」
綾女は額に冷たい手ぬぐいを乗せられ、目を閉じて礼を言った。
「そう言うなら、力をあまり使うな」
「でも・・」
左近が覚醒していない今は、左近の分まで力を発揮しなければならない。覚醒できていない悔しさを左近は口にはしなかったが、綾女には痛いほどわかっていた。
そうなのだ。覚醒するまで、私が踏ん張らなければならないのだ。倒れている暇はない・・。
綾女の表情を読み取り、左近はため息をついた。
「またよからぬことを考えているだろう」
「何をくだらないことを。私は寝る」
「そうだな。ゆっくり休め」
左近の手が掛け物を引き上げた。冷気が入らないように肩口を押さえる。その直後、綾女の唇が柔らかいものに触れた。左近の唇だった。
「何を・・」
だが肩口を押さえられているため動けない。
「まじないだ。早くよくなれ」
余裕たっぷりに左近は部屋を出て行った。
甘い疼きが全身に回る。綾女は頬を染めていた。
- 時を超えた絆
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