契約書にはフルネームで書いてあった。
「香澄綾女・・・。綾女。今年で23歳。俺より4つ下か」
はーあ・・・とため息をついて左近はベッドに横になった。ひと目見たときからとても気になっていた。わけもなく気分が高揚し、動悸がする。
目を閉じれば綾女の顔ばかりが浮かぶ。
髪をひとつに結い、涙ぐむ。その背後には丸い月・・・。
「?」
気づくと朝になっていた。
「夢か?」
あの姿は確かに綾女だったが、まだ泣き顔も長い髪も見てはいないはずだった。
「大丈夫ですか?」
その声の方を向くと、香澄・・・綾女が心配げに見ていた。
「すごくうなされていましたよ。ドアが少し開いていて、そこからあなたの苦しそうな声が聞こえたので、無断で悪いと思ったんですけれど」
「ああ、もう大丈夫・・。心配かけてすまなかったね・・」
左近が体を起こすと、綾女は小さく悲鳴を上げて横を向いてしまった。耳まで真っ赤になっている。
「どうした?あ、なんだなんだ、気にしない。俺いつも上は着ないから」
綾女の動揺ぶりに左近は苦笑しながら服を着た。
やっぱり女の子だな・・・。
それと同時に、普段から体を鍛えたかいがあったと、胸をなでおろしていた。
そして左近に背を向けている綾女がどうしようもなく愛おしくなり、後ろから抱きしめた。
「こ、これは・・・」
触れてはいけないところに触れてしまった左近。その豊かな質感に浸る間もなく、背負い投げを食らってしまう。
「どこ触ってんの!バカバカバカ!」
怒髪天を突き、綾女は左近に罵声を浴びせると蝶番が外れんばかりにドアを力いっぱい閉めていった。
あとに残ったのは、床に叩きつけられた左近。とっさに受身を取ったが衝撃はやはりなくはなかった。
「うう・・・前途多難かも・・」
- HIT記念
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