鬱陶しい梅雨が明け、眩しいくらいの太陽が輝く夏。
ゴールデンレトリーバーだった信長は、蘭丸の手によりラブラドールのように毛を刈り込まれてしまっている。
見るからに涼しげだ。
そしてここにも涼しげな姿。綾女がノースリーブのワンピースで左近の部屋を訪れた。
「クーラーの調子がおかしいの。わかる?」
すぐ隣なのに、まだ綾女の部屋に入ったことがない左近は少しドキドキしていた。ナチュラルな色使いで統一された部屋。きちんと整理されている。
あれこれ試してみたが、やはり業者を呼ばないとわからないという結果になった。だが今はお盆の時期に入ったばかりだ。
夕食時に相談してみるが、やはり予想していた答えだった。
「熱帯夜、しばらく続くそうね・・」
佳代夫妻、桔梗カップルの部屋はお邪魔できない。蘭丸も今晩から信長を部屋に入れてあげるそうだ。
「俺の部屋・・しかないよな」
「えっ」
綾女は左近を見た。みんなも頷いている。
「おかしいことでもないでしょ。あなたたち付き合っているって、左近から聞いているもの」
再び綾女は左近を見る。わずかに視線を揺らし、少し切なげに綾女を見つめる左近。違うのか?と訴えかけるような目だ。
「あ、ああでも、アイスノンと扇風機で何とか乗り切れるから大丈夫よ」
左近から目をそらせずに、弱々しい声で綾女が抗議するが、周囲の押しも強かった。
左近のベッドは広い。大人でもふたりはゆうに寝られる。
「私、ソファで寝るから」
左近が何かを言う前に綾女は枕をソファに置いた。左近は黙ってその枕をベッドへ持っていった。
「寝るには早いだろ?一緒にテレビでも見ないか?」
「あ・・うん・・」
ワインをふたりで飲みつつ、左近は綾女を観察する。綾女のパジャマ姿。きっちりボタンも止めてあるが、その隙間から白い肌が見え隠れする。伸びた髪に触れながら、左近はそっと綾女を抱き寄せた。酔いがまわっているのか、綾女は素直に体を左近に預ける。
「俺の気持ち、知っているだろ?」
「うん」
「綾女の気持ちを、聞かせてくれないか」
「・・・好きよ、左近」
目元がほんのり染まり、綾女が左近を見上げる。あまりにも色っぽく、左近は我慢できずに唇を奪った。一瞬驚いたように目を見開いた綾女だが、目を閉じて左近を受け入れた。何度も角度を変え、ふたりの唇が重なる。綾女の吐息が甘く変わってくる。
「だめ・・」
胸元のボタンを外そうとした左近を、綾女は止めた。
「ここじゃ嫌」
左近はゆっくりと綾女を抱き上げた。柔らかい。そっとベッドに横たえ、綾女を見ると安らかに寝息を立てている。
「寝ちゃったのかよ・・・」
ワインは空になっている。ほとんど綾女が飲んでいた。緊張をほぐすために飲んだのだろう。左近はグラスとビンを片付け、綾女を抱きながら眠った。
「ん・・・」
寝返りを打って、綾女は何かにぶつかった。
「何・・?」
目を開けると、左近の裸の胸が目の前にあった。
「きれいな筋肉だな・・・胸毛ないんだな・・・ひっ」
ぼんやりしたまま視線を下に走らせた綾女は一気に覚醒した。
「わっ、私っ、ふ、服、着てた・・・」
安堵の溜息を出すとともに、寝る前のことを鮮明に思い出した。とたんに火を噴くほど顔を真っ赤にしてしまう。
「顔、忙しいな」
左近のからかう声。左近が綾女を見上げてくすくすと笑っている。
「何をしたのよ」
「別に。キスしただけ。それ以上のことはしていないよ」
「で、でも、左近の格好・・」
「前に一度見ているだろう?あ、あの時は下穿いていたか。まぁいい、夜明けまでまだ時間はある・・・」
左近は綾女をゆっくり押し倒した。
「続き、する?」
綾女の瞳が潤みはじめる。涙が目尻を伝った。左近は優しく指で涙をぬぐった。
「わかったよ・・・俺も急がせすぎた」
綾女をゆっくり抱きしめ、額にキスをし、ふたりは再び眠りに入っていった。
翌日、綾女の部屋のクーラーは直り、夏の夜の夢は消えた。
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