翌晩。
綾女が怒っている。
「なぜ私の布団に左近が寝ているんだ」
「いいではないか」
「ああもう、枕だけはきっちり持ってきているんだな。どうして自分の部屋に行かないんだ」
「何、夜這い除けだ」
「何をくだらないことを。とにかく邪魔だ、早く部屋に戻れ」
綾女は左近が持ってきた枕を投げると、ゆったりと布団に身を預けた。だが、俺がいると落ち着かないのかなかなか寝付かれないようだ。
「左近、いるのか」
「何だ、眠れないのか」
綾女は起き上がり、俺をじっと睨んだ。
「お前がいるから眠れないんだ。どうして部屋に行かないんだ」
「俺が部屋に戻ったら女が来るからだ」
「別にいいではないか」
きょとんとした顔で綾女がそっけない返事をした。まったくこいつは・・俺の気も知らないで。もう強行突破に限る。
「だから俺はここで寝る」
綾女の隣に滑り込んだ。あまりの速さに綾女は反論することもできず、固まっている。おずおずと布団に入るが、端のほうで警戒している。やがてその警戒が薄れていき、寝息が聞こえてきた。
「ん・・」
背を向けていた綾女が寝返りを打ち、左近のほうに体を向ける。
可愛い寝顔だった。俺はガラにもなくドキドキしていた。
「さこ・・ん」
綾女の唇から俺の名前がつむがれた。そして綾女は体を俺に摺り寄せる。
「好き」
さらに呟き、俺は我慢できずに抱きしめて唇を重ねた。愛おしい女に寝言で告白されては、これくらいお返しするのが礼儀だろう。
綾女は穏やかに眠り続ける。俺も綾女の体を抱いて眠りに落ちていった。
- あの時代
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