「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. あの時代
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本当の気持ち21

綾女の風邪は左近にうつることなく、治った。
いくらか細くなった体を動かしてみて、綾女は服の違和感に気がついた。
腰は確かに細くなったが、胸は変わらない。背中や脇の肉がなくなったぶん、大きくなったようである。
ためしに今まで使っていたさらしを巻いてみるとぴったり同じ所で巻き終えた。少し前までさらしを巻いていると、男と同じような胸の厚みだったものが、今では隠し切れないほどに膨らみがある。きつめに巻いても苦しいだけだった。
「これは…」
綾女は青くなった。左近に知られてはいけない。ますます自分に執着してくるだろう。けれどそういうときに限ってすぐにバレてしまうものである。
「やれやれ、いつもどおりに振舞っていればいいものを」
蘭丸がため息をつくほど、綾女はぎこちなかった。背を丸めて左近から離れようとする。左近と目を合わせない。まるで忍びとも思えない仕草である。左近はその仕草がおかしかったが、わざと気づかない振りをしていた。
夜が更け、左近が寝たのを見計らって綾女は湯に入った。
「何とか今日はやり過ごせたけれど、明日からまた気が重い」
ため息混じりに呟き、1日丸めていた背を伸ばすように伸びをした。
すいっ
大きな手が後ろから両の乳房を覆う。
「わっ」
綾女は固まった。大きな手でもってやっと納まる乳房が手の中でゆっくり形を変えはじめた。
「何を隠そうとしていたんだ、ん?」
左近の甘い低い声が綾女の耳で甘く溶ける。
「これはまた、見事に実ったものだな。体が細くなったぶん、たわわに自己主張している」
綾女は恥ずかしくて顔を覆ってしまった。嗚咽がこぼれる。
「私は好きでこの体になったのではない。なのに何故そのように私をもてあそぶのだ。女だから、このような辱めにも耐えなければならぬのか」
「何故そのように、考えるのだ」
生真面目すぎる綾女に左近は優しく声をかけた。
「私は女であることを捨てたはずだ。それなのに、否応なく体は変わっていく。女は見下される。弱き者と決めつけられる。私はそれが嫌だ。だから男に身をやつして対等に渡り歩いてきたのに。それをここで否定されるような・・・」
綾女の声が途切れた。
「誰も否定はしていない」
左近は穏やかな声で言った。
「俺は素のままのお前を愛しているだけだ。確かに戯れが過ぎたとは思う、それは認める。だが男と女が愛し合うのは理屈ではないと俺は思っている」
「体か?」
綾女が言いたくないことを綾女自身が言おうとしていた。
「私が物珍しかったから抱いただけか?女であれば私でなくてもよいではないか。左近に私はふさわしくないだろう?」
ひどいことを言っている、と綾女は自覚していた。左近は私を抱きながらあまたに抱いた女と比べているのではないか。左近の端正な顔が見る見るうちに凍りついていった。
長い沈黙が流れた。
「そうか。お前はそう思っていたんだな。お前を抱いたのは俺の気まぐれだったと言うんだな」
「………」
綾女は返事ができなかった。左近をじっと見つめていた。
「俺は、お前自身が好きだ。他の誰とも比較したことはない。比較なんてできるわけがない。俺はお前に会った時から、お前だけを見ていたからだ」
穏やかな低い声で左近は言うと、ため息をついた。
「俺は本心を言った。お前がどうとろうがお前の勝手だがな」
そして湯から出て行った。
・・浅ましい女だ、私は・・
綾女は肩を抱き、涙を流した。

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