山々の紅葉が麓に降りはじめていた。
朝晩はだいぶ冷え込み、吐く息が白い。
「ふう・・っ」
冷えた指先に吐く息をかけ、少しでも暖をとろうとする。
「今朝は冷えたな・・」
呟く唇はほんのり桜色になっている。
やがて綾女は歩き出した。
・・今度はどこへ行くんだ
“風”が話しかける。
「妖魔の気が感じられるところへ・・それが私の使命だからな」
・・相変わらず、固いな
綾女の目に白いものが映った。
ちらちらと舞い落ちるそれは・・雪。
空を見上げてもそこは青く、澄み渡っている。
「風花・・?」
かざした手のひらに雪が乗り、ゆっくりと溶けていった。
「遠くの山の雪が、こんな所まで風に乗ってくるのだな」
手を握り、そっと唇を当てる。
・・左近、あなたも遠くから風になって私のそばにいるのだな。
風がそっと綾女を抱きしめた。
・・綾女。この身ではお前に触れられぬが、こうしていつでも見守っているぞ
「すまぬな、左近。でももうすぐ、お主に会えると私は信じている」
目を閉じて空をあおぐ綾女の唇に、温かい雪が触れた。
それはきっと、左近の口付けだったのだと、綾女は思った。
- あの時代
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風花は左近の想いを届けようとして、降ったのではないでしょうか。実体で触れることが叶わなくとも、それ以上に彼らの想いは伝わってる気がします。
彼らは天できっと幸せになったに違いありません。切ないけど温かい気持ちになれました。ありがとうございます。
「風」の左近を書くときはいつも寂しく、切ないです。でも根底に流れる想いの温かさが唯一の救いになっている気がします。
彼らを抱きしめてあげたくなります。^^