「炎情」は、妖刀伝二次小説サイトです。 綾女と左近の、本編でのあの別れに納得できなくて、色々な妄想を膨らませ、ちりばめています。

  1. 現代版
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雨宿り

学校の帰りに、夕立に降られた。
「まったく・・」
俺は潰れた店先に飛び込んだ。間口は広いとはいえないが、ここで止むまで待っていよう。夕立だから、しばらくすれば虹とともに雨も上がるだろう。
空を見上げたとたん、ひとりの少女が飛び込んできた。
危うくぶつかりそうになり、少女は
「ごめんなさい」
と言い、俺を見上げた。
「なんだ、左近か」
俺と目が合うとその少女ー綾女ーは力を抜いた声を出した。
「俺で悪かったな」
俺も愛想なく答える。
こいつと俺は幼馴染だ。家は隣、幼稚園も小学校も中学も一緒。高校まで一緒で、よりによって今年はクラスも一緒だ。
「でも知らない人とふたりになるよりはましかな。ちょっと持っていて」
綾女はカバンを俺に押し付け、ハンカチで拭きながら俺を見た。紅潮した頬が可愛らしくて俺は一瞬見とれてしまった。
「ああもう、びっしょり。早く帰って着替えないと風邪引いちゃう」
濡れたブラウスに肌が透け、下着の色までうっすらとわかる。俺は慌てて目を反らせた。
「ありがと。重かったでしょ」
「別に」
綾女は俺からカバンを受け取ると、いたわりの言葉をかけてきた。それに対しぶっきらぼうに答える。
いつの間に、こんなに可愛くなったんだろう。
小学生の時は俺より背が高くて、けんかに負けると悔しがって情け容赦もなくぶってきた綾女。あの時は男の子のようだったな。
中学に入って俺はあっけないくらいに綾女の背を抜き、部活に打ち込んでいた。綾女も同じ部活だったが、男子と女子とで勝負することはなかった。
今日、数年ぶりにまともに綾女を見た気がする。
こんなに可愛かったんだな。
「もう上がるね」
空を見上げていた綾女が話しかけてきた。確かに雨は小降りになって、空は明るい。
「綾女」
「ん?」
「夏休みになったら、どこかに行くか?」
自分でも思いがけない言葉が出た。綾女はぱぁっと顔を輝かせた。
「嬉しい、左近が誘ってくれるなんて。ありがとう」
その笑顔に俺は鼓動が早くなるのを感じた。
「俺の気が変わらないうちにどこに行くか言えよ」
俺はそう言い放つと、まだ上がりきらない雨の中を走り出した。

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