携帯が鳴る。
「はい」
綾女は何気なくとった。
「綾女、左近がお前の携帯番号聞きたいって言うんだけど、いいよな」
蘭丸がいきなり話しはじめた。
「え?いきなりそんなこと言われても」
「やっぱそっかー。だめだってよ、左近」
そばに左近がいるようだった。
「じゃあメルアドならいいだろ」
「ちょっと待った。そこに左近がいるの?」
「いるよ。代わるから本人同士で話せよ」
「待て、蘭丸、蘭丸ってば!」
「・・・・・・・・・」
くっくと笑いをかみ殺す声が聞こえる。
蘭丸の馬鹿。電話代わるの早すぎ。もろ怒鳴っちゃったじゃない!
綾女は顔を赤くした。
「あ、あの・・」
「だめだよ、お前の大声で左近の笑いが止まらなくなってるぞ。今どこだよ」
「○○デパートの前だけど」
「あ、本当だ」
「は?」
綾女は慌てて周りを見渡した。
「うしろ」
「えっ」
綾女は振り返った。蘭丸と左近が立っている。
綾女は顔が赤くなったままだった。左近をそっと見ると、いつもと変わらないやさしい微笑を綾女に向けていた。
「これから仕事なんだ。夕方には終わると思うから、それから食事でも・・どう?」
「あ、はい」
「よかった。じゃあまたあとで」
左近は撮影スタッフの中に紛れていった。綾女は蘭丸をつついた。
「もう、何でふざけるのよ。私恥ずかしかったんだから」
「ふざけてなんかいないぞ。左近の希望を俺が伝えただけだ。それにさっきかけたのは左近の携帯からだから、登録しておけば?おっと、俺もお仕事」
じゃ、と手を上げて蘭丸も撮影スタッフの中に入っていった。
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