それから1週間。
左近は仕事が忙しくなかなか綾女と電話をする時間もなかったが、綾女はテレビやラジオで左近を見ていた。
「綾女?」
久しぶりに聞く左近の声。綾女の心に甘いときめきが灯った。
「左近、元気そうだね」
「はは、そうでもないよ。でも綾女の声を聞いたら疲れが吹き飛んだよ」
「そんなこと・・」
綾女はもじもじとした。自然と甘い声になる。
「明日は会える?」
左近が聞いてきたが、綾女はふとクローゼットに目をやった。
「明日、入学式なんだ、大学の」
「ああ、そうか。じゃあ、式が終わったら俺のところに来る?」
「え・・うん!」
元気のいい答え方に左近は嬉しそうだった。
左近と出会った頃にまだ固い蕾だった桜は、いまや満開となり、少しずつ花びらを散らしはじめていた。その中を明るい色のスーツを着た綾女が歩いていた。出迎えるかのように左近も綾女に歩み寄る。
「あ、左近。久しぶり」
「綾女。スーツも似合うな」
「そう?ありがとう」
恥ずかしそうに上目づかいで左近を見る。薄く化粧を施した顔は18歳とは思えないほど大人びていた。左近はしばし見とれてしまった。
「そんなに見なくても」
「きれいだから」
「もう・・」
左近は綾女の荷物を持った。
- 現代版
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